- 対象
- 全スタッフ
- 難しさ
- 高
- 実施時間
- 導入+アプリ構築に約1ヶ月
- コスト
- 一人1,500円/月+その他
- 主な内容
- プロジェクト管理ツールは多数あるが、kinotneがカスタマイズできて便利
- コストも安くて、その他にも多様なアプリを作成できる
- ただし専門性には劣るので、無理にすべてkintoneにはしない方がよい
- 効果
- 各案件の進捗状況など全体の仕事の状況を把握できた
- ガントチャートで特定職能のリソース状況を確認でき、メンバー編成を効率化できた
- 売上や利益率などをもとに、案件の振り返りができるようになった
Web制作プロジェクト管理ツールとリモートワークでの活用事例
わたしが勤めるWeb制作会社では、2020年2月からkintoneという自社で様々なアプリを簡単に構築できるサービスの利用をはじめました。
きっかけは、2019年に社員数が7人→11人といきなり1.5倍に増えたことで、オンラインのWeb制作プロジェクト管理ツールが必要になったことです。
それまでは少人数でそれぞれ案件の管理ができていました。でも、プロジェクトに関わる人数が増えたこと、EvernoteやDropboxといったこれまでのアプリだけでは各案件をスムーズに共有することができなくなり、全体の案件状況も見えづらくなっていました。
kintoneの導入やアプリの作成には、いろいろなハードルがありましたが、結果として、今ではプロジェクト管理に関わらず、社内の多くの機能を担うようになりました。
- プロジェクト管理(工数等の利益率把握・制作スケジュール管理)
- 評価制度の管理
- 福利厚生等の申請共有
- ミーティング等の議事録共有
一つの目的にとらわれないこの柔軟な機能の多様性こそ、kintone導入の一番のメリットだったと感じています。
ちょうどコロナが流行する直前、リモートワーク体制の移行にも大きく貢献してくれました。
今日は、プロジェクト管理ツールとしてのkintoneの導入から活用状況までをご紹介しますね。
kintoneの導入経緯と、Wrikeとの比較検討
プロジェクト管理ツール導入のきっかけと求める機能
プロジェクト管理にkintoneを導入する前は、EXCELやEvernoteなどのツールを組み合わせた管理を行っていました。
工数管理はtoggl、ガントチャートはTom’sPlanner、議事録やデータはEvernote、そして売上や利益率の管理にはEXCELといった具合です。
これだと、俯瞰的にプロジェクト全体をまとめることができません。特に管理職にとっては、制作プロジェクト全体の進捗状況を把握することが難しい状態でした。
そこで、社内でチームを組んでのプロジェクト管理ツール検討がはじまります。
当時社内で希望していた主な機能は以下のようなものでした。
基本機能 | 顧客毎にプロジェクトを作成。参画メンバー、契約・制作状況、 その他必要な情報を一元的に管理することができる。 |
タスク管理 | デザイン・コーディングなどを各メンバーに割り振り、 メンバーごとにプロジェクトを横断してタスクを一元管理することができる。 |
タイムトラッキング | 各タスクにかけた時間を計測。 それによって実際にかかった原価(工数*時間単価)を算出することができる。 |
ガントチャート | 各プロジェクト毎の進捗状況をガントチャート形式で表示。 プロジェクトを横断して進行状況やリソース管理を行うことができる。 |
レポート作成 | プロジェクトの売上・工数・利益率などを自動的にレポートとして算出できる。 |
プロジェクト管理ツールはInnoPM・Backlog・Redmine・Asanaなど多数ありますが、これらの機能をすべて満たすことのできるソフトとして、最初に見つけたのが”Wrike”です。
当初はこのWrikeをおいて他に有望なツールが見つからなかったことから、実際に問い合わせ・試用導入まで進みました。
社内でもプロジェクトチームを組み、本格的にWrike導入に向けて取り組みを行います。
が、ここにきてわたしの中に2つの懸念がもくもくと頭をもたげました。
1つ目は、Wrikeが海外製かつ多機能だったため、全スタッフの導入にコミュニケーションコストが相当かかることが予想されたこと。機能を使いこなせないのではないか、入力がかなり手間ではないかなどの懸念が発生しました。
(ちなみに、導入レクチャーも外国の方だったため、日本語はできるのですが意思疎通にしばしば問題が起こりました)
2つ目は、ランニングコストが高く、プロジェクト管理という単一の目的にしか利用できないことでした。スタッフの増員で、その他にもさまざまな情報共有の仕組みが必要になっています。それをツールごとに分割していくと、コストも管理も複雑になることが心配でした。
そこで目をつけたのがkintoneです。
kintoneとは、ひとことでいえば様々なアプリを簡単に自社で構築できるツールです。システムの専門的な知識がなくても、顧客管理から勤怠管理、議事録や日報といったものまで作ることできます。
その拡張性と、自社に合わせたカスタマイズのしやすさで、プロジェクト管理ツールを作成できないかと考えたのです。
kintoneとWrikeの機能・コスト比較
Wrike導入まで秒読みの段階で見つけたkintone。プロジェクトチームで再考すること自体意見が割れました。しかし、この先何年も利用するツールだったので、妥協はできません。
次の内容は、実際にわたしが会議で提出した資料です。
kintoneをおすすめする5つの理由
- 年間コストが安い
約30万円も年間差額がある。 - 拡張性が高い
プロジェクト管理だけでなく、見積もり機能、契約書作成、福利厚生機能、スレッド掲示板、その他様々な機能を付与できる(可能性がある)。 - スタマイズが可能
細かい調整を社内でも対応できる他、専用アプリ開発を請負会社も多数ある。 - 日本製
サポートや利用方法など、ネット上に情報が多数ある。もしものときも安心。 - UIが使いやすい
シンプル故に、わかりやすい。多数のメンバー&長期利用でもストレスにならない。
コスト・機能比較 | Wrike | kintone |
---|---|---|
初期費用 | 約218,000円 初回のコンサル費用 | 494,800円 有料プラグインの費用。 内¥275,000は、2022年まで試用版利用可 →実質初年度¥189,800 |
年間費用 | 約615,283円 15人までの場合 | 334,370円 基本費用 11人*1,500*12ヶ月 ゲスト 3人*1,200*12ヶ月 有料アプリ 98,000円/年 |
ランニング差額 | 280,913円オトク! | |
プロジェクト管理 | ◯ | ◯ |
ガントチャート | ◯ | ◯ |
タスク管理 | ◯ | ◯ |
工数実績管理 | ◯ | ◯ |
リソース管理 | ◯厳密・数値 | ◯直感的・内容 |
このときには、kintoneの試用期間を使って「プロジェクト管理」「ガントチャート」「タスク管理」も既に作成していました。しかもkintone側のサポートやレクチャーは一切受けていません。
Web制作で簡単なシステムを作っている人にとっては、それほど簡単にアプリを作れるような画期的なツールだと思います。(あとカスタマイズの情報や、プラグインがネット上にたくさんあることもkintoneの魅力のひとつでした)
それらの使い勝手には一部問題があったものの、最終的にコストと拡張性の面からkintoneの利用をはじめることになりました。
※誤解のないようにお伝えしたいのですが、Wrikeはとても優れたプロジェクト管理ツールだと思います。特に規模感がある程度大きい会社ではその恩恵も大きいと思います。わたしの会社ではコスト感があわなかったという感じで、実際最後までWrikeを推す人もいました。
kintoneでのプロジェクト管理の仕組み
現在わたしの会社では、kintoneでは以下のアプリを連携してプロジェクト管理を行っています。
- 顧客連番表 … 顧客の基本情報の管理
- プロジェクト管理 … プロジェクト全体の管理
- ガントチャート … プロジェクト横断×リソース別のスケジュール管理
顧客連番表
顧客の基本情報を登録しているアプリです。
各顧客ごとに連番を振り、顧客の基本情報をまとめています。
といっても、わたしの会社では、住所や連絡先などは、請求管理アプリboardに登録していますので、実際ここで登録するのは会社名くらいだったりします。
プロジェクト管理
顧客連番にひも付き、作成するのが「プロジェクト管理」です。
自分が担当している案件の一覧がガントチャート形式で表示され、ひと目で状況を確認できるようになっています。(自分の担当していない案件などもすべて共有できます)
ちなみにこのガントチャートは、デフォルトのkintoneでは利用できないので、スマートバルーンさんの「KOUTEI」という有料プラグインを利用しています。
こちらはレコードの詳細画面。キャプチャだと少し見づらいのですが、プロジェクトのより詳細なスケジュールがガントチャート形式で表示されます。
その他の基本情報もいろいろありますが、一番重要な項目は「工数実績明細」という欄です。
各項目ごとの見積もり金額と、それに対する工数実績(実際に作業した時間)を入力することで、粗利と利益率を表示することができます。上の例ですと全体で利益率「2.26%」と赤字ではないもののかなり厳しい数値です。
売上に対する利益などの状況を把握することで、工数を抑えたり、場合によっては追加費用の交渉をすることができるようになりました。また「よかった」「悪かった」という結果に対し、どの工程でそのような結果につながったのかを把握、見直しして次回に活かすことができます。
しかしながら、この「工数(実際に作業した時間)」を把握するためには、全員が実際の工数を入力する必要があります。kintoneでのタイムトラッキングアプリは存在せず、擬似的なアプリを開発して試したりもしたのですが、やはり専門アプリの方が圧倒的に使いやすかったです。
というわけでわたしの会社ではtogglを利用して、各案件ごとの工数集計を行い、毎月1回プロジェクト管理に入力するという形式をとっています。
※日本語で使い方を商会する記事もたくさんありますのでぜひ検索してみてください。
また、各案件の売上や利益率の一覧をレポートで出力するのは、kintoneの標準機能で簡単に作成することができました。
毎月自動的にレポートを作成してくれるので、過去の月についても見直すことができて便利です。
ガントチャート
ガントチャートは、プロジェクト管理に組み込まれているのですが、残念ながら「KOUTEI」では、「プロジェクト横断×職務内容別」のガントチャートを見ることができません。
どういうことかと言うと、例えばデザイナーのリソース状況を確認するために、「デザイン」の予定だけをガントチャート形式でみたいと思ってもできないのです。複数いるデザイナーの誰にどれだけ負荷がかかっていて、誰に新しい依頼を頼めばいいかわからない状態です。
これを解決するのがガントチャートアプリになります。
例えばこちらは各案件の「デザイン」だけのガントチャート一覧画面です。
既に担当者が決まっている場合は、担当者名が記載されています。一方個別に調整などしても担当者が決まっていないものは名前が書いていません。
これを誰がどのように担当するか、または今月各デザイナーの負荷状況はどうか、などの調整や相談を月1回ミーティングの機会を設けて行っています。
※コーディングやシステムについても表示を切り替えて同様に閲覧できます。
なおこのアプリは「プロジェクト管理」から自動的に反映させるので、個別にガントチャートを入力しなおす必要がありません。具体的には「kintone テーブルデータコピープラグイン」という無料プラグインを利用して転載させています。
ちなみにこちらのガントチャートは、さきのKOUTEIとは別の無料プラグイン「kintone 日程・工程・稼働表作成プラグイン」というものを利用しています。
kintoneでのWeb制作プロジェクト管理まとめ
kintoneで独自に作り込むことで、当初想定していたプロジェクト管理のオンライン化に無事成功することができました。
リモート体制でも、各自の大まかなリソース状況や、各案件の稼働状況、売上、利益率を把握できるようになったことは、会社全体の制作体制にとって大きな意味を持つものだったと感じています。kintoneのアプリ作成もとても手軽にできるので、構築自体にはそれほど時間はかかりませんでした。
ただ、実際にこのアプリ群を作成・運用するまでの「アプリの設計」と「社内浸透のための働きかけ」はかなり大変だったというのが正直なところです。
アプリ設計では、当初タイムトラッキングやタスク管理もkintoneへの一元化を目指したものの、かえって入力の手間など負担が増えて社内からは大不評。結局外部の特化アプリに切り替える2度手間を経験しています。プラグインの調査や各アプリの連携、どういう機能が必要かなどの洗い出しにも相当時間がかかりました。
アプリの運用方法や入力方法についても度々説明レクチャーを行う必要があり、結局円滑な運用に至るまでは半年以上の期間がかかったのが正直なところです。
このように意外と手間のかかったkintoneでの構築でしたが、その結果kintoneでのアプリ構築を習得したことで、現在社内では他にも様々なアプリ構築・利用することができるようになりました。
現在わたしの会社では、以下のようなアプリを独自に作って運用しています。
・評価制度関連のアプリ×8
・福利厚生関連×2
・打ち合わせ議事録など×2
今後も様々なアプリを構築することで、リモート環境での制度や文化の利用を促進していくつもりです。これは他のアプリやシステムでは実現できなかったことで、しかも追加コストがかからないことから、本当にとても役立っていることを実感しています。
役員という立場で社内にkintoneを使いこなせる人がいると、リモート環境での情報共有やプロジェクト管理にとてもメリットがある、というのがわたしなりの結論です。
Web制作会社ではシステム担当の方もいらっしゃると思いますので、そういう方と協力してアプリつくるのもいいかもしれませんね。最初は無料の仕様期間もありますので、kintoneでのトライ、おすすめです!