2020年2月、コロナの発生を契機に私の会社は完全リモートワーク体制に移行しました。
幸いなことに、事業内容がWeb制作というIT分野であったこと、2019年に試験的にリモートワークのための準備を進めていたこともあり、比較的スムーズに環境を整えることができました。
しかし、実際にリモートワーク体制になってから丸3年経ち、様々な課題も浮き彫りになりました。
今日は特に人材面に焦点を当てて、リモートワーク体制のメリットとデメリット、そしてこれからの未来を語りたいと思います。
リモートワークの影響とデメリット
3年間で退職者3名
私の会社は社員数約10名、そのうち3名がこの3年間で会社を去りました。
必ずしもリモートワークの影響だけではありませんが、「リモートワークが合う・合わない」の適正は間違いなくあります。
実際に退職した人に話を聞くと、リモートワークになってから次のようなストレスを抱えていたことがわかりました。
- 仕事をチームでしている実感がなくなった
- 画面越しでコミュニケーションを取っても孤独に感じられる
- 仕事をちゃんとしているのかといったプレッシャーを感じる
- オフィスで直接顔をあわせて仕事をしたい
もちろん会社としては、チャットやzoomなどのコミュニケーションツール、1on1の面談などを続けてこの問題を解消しようと努力してきたつもりです。しかし、今までのようにオフィスで仕事をするのとは根源的に異なる環境になる点は避けようがありません。
実際に退職した3名のうち2名は、明らかに外交的・社交的なタイプで「人と会う」ことに刺激や喜びを感じる人でした。
コロナが落ち着いてからは、徐々にリアルの交流会なども開催できるようにはなってきましたが、どれだけデジタルの環境や制度を整えても、「完全リモートワーク」という体制で会社の事業を行う場合は、性格的に相容れないという人がいることは、念頭に置いておく必要があります。
しかし、残りの7割程度の人は、リモートワークの適正があり、むしろ業務効率や働きやすさがあがったと考えています。
採用獲得単価の上昇
採用に関しては、社会的にリモートワークが広く普及し始めたことが思わぬ余波を及ぼしました。それは採用獲得単価の上昇です。
全国的にリモートワークになった=どこでも働けるということは、給与の高い首都圏の仕事も地方でできるようになったということを意味します。これまで、地方の人は基本的には通勤圏内の地元の企業に就職していたわけですが、特にスキルの高い人ほど首都圏の企業に就職できる環境ができあがりました。
逆に言えば、地方の中小企業が優秀な人材を獲得するためには、首都圏の給与基準でなければ難しい事態になったと言えます。
リモートワークが合わずに退職した社員の代わりの人材を採用しようにも、これまでのように採用媒体に載せれば応募が来るというわけにはいきません。
これを解決できる方法は大きくわけて2つです。
ひとつは、給与が首都圏ほど高くなくても「この会社で働きたい」と思ってもらえるような企業ブランディングを実現すること。もうひとつは、高い給与が払えるように事業形態そのものを転換することです。
私の会社では、幸いリファラル採用(既存社員からの口コミ・紹介)で採用が決まった人もいますが、やりがいをもって将来的にも働き続けてもらうためには、この2つは避けてて通れない道のりだと感じています。
新人の研修や育成
せっかく入社してくれた人材をどう育てるかも、リモートワークにおける大きな課題の一つです。
これまでのように、隣のデスクで気軽に質問を受け付けたり、相手の表情などからニュアンスを掴みながらコミュニケーションを取ることは難しくなりました。例えば、視界の端で様子を見たり、電話の様子を見て、「困っているな」といったことを察知してフォローすることができません。
実際に、リモートワーク中に3人の方に有期雇用(アルバイトで入ってもらい、お互いによければ社員登用あり)で入ってもらいましたが、このうち2名は数ヶ月で退職となりました。
この2名はいずれもリモートワーク経験者でしたが、それでも研修や育成は一筋縄ではいきません。
- 求められるレベルが高くプレッシャーを感じた
- 業務のやり方が合わなかった
- 担当者の人が忙しそうで、気軽に質問ができなかった
これは実際に退職した方からいただいたコメントです。
特に課題に感じたのは、「周り(複数人)が自然とフォローする」ということの難しさです。リモートワークの性質と業務の関係から、新入社員と話すのは育成担当者がメインとなりますが、周りの人にはそのやり取りや情報が見えなくなってしまうことがあります。
そうすると、担当者との相性や、担当者が忙しい場合のフォローなどができずらくなり、問題が発生しても周りが適切にフォローすることは困難です。
私の会社では、これを解決するためには、担当者を1名にしない、他のメンバーとも夕礼の機会などを作ってなるだけ多くの人と関わる環境を作るといったことを行っています。
それでもリモートワークがいいと言える理由
退職、採用、教育と様々な面に課題のあるリモートワークですが、それでも私の会社が原則出社に回顧することはないと断言できます。
それは簡単に言えば、リモートワークが向いている人にとっては、出社するよりもはるかに効率的でストレスなく、成果をあげることができるからです。多少の給与の格差が問題にならないほど、仕事を楽しみながら会社に貢献してもらえる=ずっとこの会社で働きたいと思ってもらえる環境とも言えるでしょう。
問題はそう思えるほど環境を整えることができるか、ということではないかと思います。いかにリモートワークに適正がある人でも、環境が十分整ってなければ、仕事の効率やモチベーションは下がり、コミュニケーションがうまくいかず、成果を出すこともできません。
- 電話の応対をしなくてよい環境をつくる
- 会社のメールをGmailでどこからでも送受信できる
- 業務に必要なデータをどこからでもアクセスできる
- チャットでコミュニケーションがとれる
- テレビ会議で顔をあわせて打ち合わせができる
少しずつでもこのような環境をつくることができれば、採用・人材面だけでなく、事業そのものの発展にもつながると感じています。
実際に私の会社では、リモートワークになってから退職者が3名でたにも関わらず、売上や利益はむしろあがあっています。
リモートワークの採用人材にはまだ課題は大きいですが、その可能性を信じて、今後更に直接的な課題解決に役立つ情報発信をしていくつもりです。