最近、「素直さ」は最強の武器ではないかと思うのです。
粘土のように柔らかく形を変えられて、スポンジのように吸収する。
こういう人は、いろいろな体験ができて、柔軟に考え方を広げられてるので、対応力が広がりますよね。
先輩のアドバイスや他人の意見などを「まずはやってみよう」と受け止めることができるので、周りからも好感を持たれることが多い。
やったことがないことや、自分の考えと違っても、一旦は受け入れてみるという姿勢が可能性を広げているんだなと思います。
ところでわたしは、全然素直ではないのです。
こだわりは強いし、違うんじゃない?と思うことには、つい意見を言ってしまう。納得できないことには動かない。嫌だと思うことはやりたがらない。
やむを得ず意見をまげる時には、「これはひとつの貸し」だと考えることで納得する。
うん、実に扱いずらい面倒な人ですね。笑
こういうコンクリみたいに固い人は、環境の変化に適応しずらいですし、意外と衝撃に脆いんです。
だから素直な人は本当に眩しい。
ところが、コンクリみたいな人でも、周りに素直な人が多いと、だんだん柔らかくなるものだなということを感じています。
例えば、「これをやってほしい」「こうやったらどう?」ということを伝えて「はい、やってみます」「ありがとうございます」と言われ続けていると、だんだん借りがたまっていく気持ちになります。
「いつも頼んでばかりだからお返しをしたい」「いつも聞いてくれているから、相手のことも聞いてあげたい」という気持ちになるんですよね。
だから「今ちょっと大変で…」と言われると何か手伝いをしたくなりますし、「こうしたらいいんじゃないでしょうか」と言われると、「なるほど、それもあるかもしれない」と思えるようになります。
つまり、素直さの湿度というのは伝染するのです。
逆に周りがコンクリみたいな人ばかりだと、粘土みたいな人もだんだん湿度が吸い取られて、固くなってしまう。
会社やチームに柔軟性をもたせてうまくやっていくためには、この湿度を一定以上に保てるかがとても重要だと思うのです。
そういう意味でも、素直な人という存在はとても大きい。
ところで、わたしは役員として「やりたいこと・好きなことを伸ばして、やりたくないこと・苦手なことは、それが得意な人に任せていく」というチームワークが理想だなと思っています。
やりたいことや好きなことは夢中になってどんどん上達しますし、苦手なことや嫌いなことはすごく努力しても、やっと人並みになるくらいです。
それなら、好きなことでずば抜ける存在になれる方が、自分にとっても周りにとっても幸せですよね。
ここでひとつ問題なのは「好きなこと」「嫌いなこと」はどうやって見つけるのか、ということです。
例えば、わたしは「人と一緒に何かやるのが苦手」という意識がとても強くて、仕事は全部ひとりでやりたがりますし、なるだけお客さんとも会わないようにしていました。
でも、やむを得ず人に仕事を振ったり、お客さんと話すことを繰り返していくと、「チームでやった方が楽しいし、いいものができる」「お客さんが喜んでくれて嬉しい」という気持ちが芽生えてきました。
苦手だなぁと思うことでも、何回かやっていると、「案外できるじゃん」とか「意外と好きかも」と思えることもあるのです。
「わたしはこういうタイプだから向いていない」「こういうのは納得できないからやらない」というスタンスだと、コンクリが固まって形を変えられないように、自分自身の成長の可能性をつぶしてしまうんですよね。
だから素直な人は、「人に振り回されている」「自分がない」と思われることもありますが、いろいろな経験をする中で「得意なこと」「苦手なこと」の精度が高まっていき、最終的には「得意中の得意」「心から好きなこと」に集中できるようになれるのではないかと思います。
それこそ粘土が、さまざまな形を経て、最終的に自分だけの美しい形を手に入れるように。
だから、わたしのように「自分は今コンクリに近いかな」と思う人は、ちょっと湿度を増やしてみることを考えるといいかもしれません。
全部を粘土みたいにしなくてもいいんです。
一部だけ、ちょっとだけ。
その湿度がちょっと周りに伝染したり、自分の形が変わったりしていって、今まで自分が思ってもいなかった才能が見つかったり、新しい可能性が開けるかもしれませんよ。