あまり大きな声では言えないのですが、わたしはいわゆる軍事オタクに属しています。
特に第二次世界大戦頃の政治・戦略・軍事・兵器等に関しては、たぶん100人に1人くらいの知識があります。
(と言っても、ハマったのは小学生〜大学生くらいなので、社会人になってからはめっきりそういった情報を収集する機会は減りました)
さて、軍事戦略のなかに「戦略予備」という考え方があります。
これは、その名の通り前線で戦う戦力とは別に、後方で待機する予備軍を置いておくことです。
もしどこかの戦線が決壊したり、攻撃のための戦力がより必要になったときに、投入される戦力です。
ビジネスにおいては、何も利益を生まない予備を置いておく、なんてことは基本的にはナンセンスですよね。
でも、結構これが重要なのではないかと思うのです。
リソースの戦略予備
一般的な会社では、多かれ少なかれ繁忙期があると思います。
事前に予測できるなら体制も整えられますが、予期せず依頼が重なったり、トラブルでスケジュールがずれたりすると、限られた体制下で対応しないといけなくなりますよ。
一時的な問題なら、メンバーが120%の力を出せば対応できるかもしれません。
でも、努力や根性は長く続きません。120%は、2週間も続けばいつ体調不良やメンタルへの支障が発生するかもしれない状況です。
もし一人でも戦線離脱が発生すると、メンバーの負荷は一気に高くなり、社内全体のパフォーマンスは著しく落ちてしまいます。
こういうときに活用できる戦略予備は、外注さんやパートナーさんです。
でも120%の状態で、外注さんやパートナーを探し、初めての人にコミュニケーションを取って対応依頼をしていくのは、更に負荷が増すことになってしまいます。
そこで、80%など十分余力がある状態のときにこそ、パートナーさんとのコネクションを作って依頼をしておくといった関係性を作っておくことが重要になります。
一見無駄に思えるかもしれませんが、いざというときの戦略予備を準備しておくと、高負荷の際にも頼ることができます。
時間の戦略予備
リソースと同じく、個々人のスケジュールに関しても戦略予備という考え方は大切です。
よほど安定した職場でなければ、常に突発的な依頼・相談・トラブルなどの事態はビジネスにつきもの。
スケジュールがパンパンの状態では、迅速な対応ができずに、どんどん負荷が高い状態が続いてしまったり、予定がずれていってしまいます。
5日のうちの1日、せめて半日(4時間)くらいは何もしない戦略予備時間を設けておくと、突発的な事態にも余裕を持って対応することができるのではないでしょうか。
とはいえ、忙しくなると「じゃあこの4時間を当てよう」となって、結局いつもその時間は業務で埋まっている状態になってしまいますよね。
そこでオススメしたいのが、「ずらせる予定」を入れておくことです。
例えば、予めカレンダーに「1週間の予定見直し時間」「自主学習時間」などで埋めておき、その時間は業務をしない前提でスケジュールを組み立てる。
社内のチーム会議などは、忙しいときには「欠席してもよい」「日程調整してOK」「時間短縮してOK」など予め合意をとっておく。
こういう機動的に運用できる時間を確保しておくと、突発的な事態にも柔軟に対応できるようになります。
PC・周辺機器などの戦略予備
リモートワークになってから、個人宅でPCやマウス、モニタなどの備品一式を管理するケースは増えているのではないでしょうか。
ところがこれが壊れたときどうするか、という想定をしている会社は少ないのではないかと思います。
例えばデスクトップ型PCは、マウスが壊れると何もできなくなります。業務中に壊れてしまうと、買い直すまでに最短でも数時間は業務が停止してしまう。
PCそのものが壊れた場合、修理に数週間、買い直しも数時間というわけにはいきませんよね。
ソフトやデータはクラウド化されていても、再インストールなどの設定にはかなりの時間をロスしてしまいます。
理想は各自宅で予備PCを置いておくことですが、そんな余裕はないと思います。
そこで少なくても、会社内に機動的に利用できるノートPCなどの戦略予備を残しておくが重要になってきます。
マウスなどの高額でないものは、自宅で使っている別のものがないかを聞いて、もしない人がいたら予め購入しておいてもらうのもいいでしょう。
これも一見すると無駄ですが、もしもの事態に失う時間や機会、ストレスを考えれば、重要な戦略予備になるはずです。
キャッシュの戦略予備
特に中小企業にとっては、キャッシュの戦略予備という考え方も重要です。
銀行などからの融資を受けずに自己資本だけで経営できるのはもちろん素晴らしいことですが、先が見えない現代にあって不測の事態は起こるもの。
十分自己資金に余裕があるときにこそ、銀行などからの融資を受けておき、きちんとした返済実績を作っておけば、いざというときにもスムーズにお金を借りることができます。
また日頃からお金に余裕があれば、多少のトラブルでもキャッシュフローを回すことができたり、いざというタイミングで投資を行うことができますので、このお金の戦略予備を持っておくことも重要な施策のひとつだと思います。
「戦略予備」のビジネスでの必要性
人は負荷がかかる状態の方が、それまでの限界を超えて成長できるものだと思います。
ただし、それが続く状態は、心身に不調をきたして生産性が落ち、他のメンバーにも悪影響をもたらしてしまいます。
どんなに良いパフォーマンスも、安定して出し続けることができなければ、プロとは言えませんし、よい仕事とは言えませんよね。
戦略予備という考え方は、余裕のない中小企業にとっては、一見ムダに思えるかもしれませんが、いざというときに起こりうるリスクや失うものを考えれば、極めて合理的な対応方法です。
(軍事という、勝利のために極限まで合理化された世界で重要視されるのですから、ビジネス的な合理性にももちろん当てはまるはずです)
ヒト・モノ・カネに関して、ビジネスでも戦略予備を日頃から準備しておくことが、毎日の業務を円滑に行うために必要な考え方ではないでしょうか。