Webサイト制作をしているわたしの会社では、ディレクターの重要な仕事の一つに見積りがあります。
実はWeb制作業界というのは、価格が本当にピンきりです。
わたしの会社のたった1/3で作るところもあれば、逆に2倍するところもあります。
どの費用が適正なのかは、正直なところわたしたちプロでも判断することが難しい。
強いて言えば、「想定される成果に対して、見合うコストなのか」という観点で考えることが、お客様から見たときに妥当な判断基準ではないかと思います。
ところがこの「想定される成果」という判断がすごく難しい。
A社とB社に同じ依頼をして、価格差が2倍あるときに、成果も2倍になるのか、というと普通はそう考えませんよね。
じゃあ安い方にした方が得かと言うと、必ずしもそうではないことも多いのです。
そして制作側としても、実は「成果」によって費用を決めているのではなく、多くの場合は別の基準を基にしています。
それが「作業時間」です。
今日はWebサイトの制作に関する値付けの仕組みについて、考えてみたいと思います。
わたしの会社での値付けの仕組み
わたしの会社の場合は、ほとんどの値付けは「工数」つまり「どのくらい時間がかかるの?」という観点で見積りをすることが多いです。
見積金額=工数×時間単価
単純に言えば、このような式で算出しています。
また、最後の「時間単価」というのは、会社を維持するために必要な売上を、一人1時間でどれだけ出さないといけないのか、という計算で算出しています。
(会社を維持するための月間総経費+利益) ÷ 人数 ÷ 1人あたりの月間労働時間 = 必要売上(時間/人)
仮に時間単価を¥5,000だったとすると、10時間かかる作業の費用は¥50,000という感じです。
Webサイト制作は、ほぼ「原価」「材料費」などがかからないので、ほとんど人件費だけで算出できてしまうんですよね。
だから必ずしも価値とは関係なく料金は決まっているのです。
じゃあ相見積もりをして、安い方が労働時間や時間単価が低いからお得だよね、というと必ずしもそうではありません。
Webサイトの料金の妥当性を判断するのに知っていてほしいこと
書かれていない内容によって時間が変わる
例えば、同じ条件で費用が2倍も変わるケースでは、一見すると安い方がお得ですよね。
ところが「同じ条件」というのが、実は同じでないことがあります。
実際につくる内容が同じでも、マメに連絡をしてくれたり、提案をしっかり考えたり、チェックもしっかりするところは当然時間もかかります。
また、Webサイトは表に出ている内容が一緒でも、実は裏側の作りやソースコードは手を抜こうと思えばいくらでも手を抜けるところです。
見た目は同じでも、中身が欠陥住宅みたいにボロボロで、メンテナンス性も低く、検索エンジンにも表示されにくかったり、読み込みスピードが遅かったり、異なるブラウザで見ると崩れて見えたり…ということもあり得ます。
プロでないとその違いは気づきにくいものですが、そういったことをしっかり作るためには、時間がかかるということは理解しておく必要があります。
価値と時間に乖離がある
例えば、ある機能をWebサイトにつけたいと思ったときに、想定される成果が低いのに、金額がとても高くなるケースがあります。
つまり工数ばかりかかるけど、成果にはつながりにくいものです。
クライアントでも判断できると思われるかもしれませんが、「金額が高い」=「価値がある」と誤認してしまう場合が往々にしてあります。
制作会社によっては、あえて成果を過大に見せかけることで受注を取りにいく、というところもありますので注意が必要です。
逆に、効果や重要性はとても高いのに、工数はそこまでかからない、というケースももちろんあり得ます。
Web制作会社として正直な気持ちを言うと、このケースでは費用を上げたい気持ちがあります。つまり価値で判断してほしい。
でも実際には競合がいて他社が低価格で出していくので、価格競争になり、価値と金額は必ずしも比例しなくなっていきます。
いずれにしても、Webサイト制作の費用は価値とは必ずしも一致しないことが多いんですね。
人によってかかる時間は変わる
費用を「工数で出す」というのは一見合理的に見えて、実は随分無理のある考え方だなと思いませんか?
例えば同じ内容でも、ベテランのAさんなら1時間で終わるところ、新人のBさんは3時間かかる。しかもAさんの方がクオリティが高い。
となると、Aさんの方が短時間なのに品質がよいということになります。
もちろん社内の給与という面ではAさんの方が人件費はかかります。
でも、チームや担当はその時々で流動的に変わるもの。
「Aさんがやるので時間単価を高くする」という調整は現実的には難しいものです。
同じように工数で費用を出すことの多いSIer(エスアイアー)と呼ばれるシステム開発業界では、客先に常駐してシステム開発をすることが多いのですが、これは明確にその人のスキルや経験によって金額が変わります。まさに人件費です。
しかし何か成果物を作って収めるという業界では、人ごとの単価をわけることができません。
最終的に社内で均等になるようにならすしかないのですが、必ずしも妥当な工数にならないケースが出てきます。
だから「ちょっとしか時間がかからないのに高いな」「かなり時間がかかるのに安いな」ということが起こることも理解しておいてもらえると嬉しいです。
Webサイトの料金が妥当かどうか判断するために
こうして見ていくと、Webサイトの制作費用が妥当かどうかを判断することはとても難しいのではないかと思います。
ありきたりな話しになりますが、何社かに話を聞いて、一番相性があって信頼できると思うところに任せることが一番だと思います。もちろん、期待される成果や内容についてもしっかり話を聞くことも重要です。
ただ、価値と費用が必ずしも一致していないことは頭に入れておきましょう。
費用ばかりかかって成果があまり出ないような内容のときに、「それならこういう方法の方が結果につながりますよ」と提案してくれるところが、本当によいパートナーになるのではないかと思います。