クレドのつくり方 社内制度

クレドのつくり方 〜行動指針を定めて会社の信条をつくろう〜

3.0
対象
全スタッフ
難しさ
作成後の運用・浸透が難しい
実施時間
策定に1ヶ月以上はかかります
コスト
特になし

クレド(Credo)とは、企業で働くスタッフの行動指針や価値観をまとめた信条のことです。
経営理念よりもより具体的な行動に落とし込んだ内容になっており、もともとはラテン語で、「我は思う」「約束」「信条」というような意味を持ちます。

最近は「クレドカード」という小さいカードを作成し、スタッフの行動規範として採用する会社も多くなってきました。

わたしの会社では、2016年にチームビルディングの外部講師の方に入っていただき、はじめて会社のクレドを作成しました。さらに2019年には改定して新しいクレドに作り変えて運用しています。

しかし、クレドの作成やその浸透は困難の連続でした。今でもわたしたちの会社で、クレドを有効に活用できている状態ではありません。(むしろ失敗事例に近いかも…)

それでも、クレドは少しずつ浸透させていきたい重要な行動指針だと考えています。
今日はそんなクレドの効果や具体的なつくり方をご紹介します。

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クレドの効果と目的とは?

2016年のクレド策定まで、恥ずかしながら、わたしはクレドという言葉自体を知りませんでした。
当時は外部講師の方に言われるまま考えたのですが、そもそもなんでクレドが必要なのでしょうか?

その目的と効果は大きくわけて3つあります

経営者の判断を仰がなくても、スタッフ自身が主体的に行動できる拠り所になる

企業活動で行われるひとうひとつの行動について、経営者がすべてを判断することはできません。

また、リーダーの好き嫌いや私情を挟んで物事を判断してしまうと、チームの価値観は崩れ、何を指針に行動すればよいかわからなくなってしまいますよね。

クレドは、現場のスタッフがそれぞれの判断で主体的に行動するための大切な拠り所となります。

例えば、ザ・リッツ・カールトンホテルカンパニーL.L.C.では「紳士淑女をおもてなしする私たちもまた紳士淑女です」というモットーのもとで次のようなクレドを定めています。

リッツ・カールトンはお客様への心のこもったおもてなしと快適さを提供することをもっとも大切な使命とこころえています。

私たちは、お客様に心あたたまる、くつろいだ、そして洗練された雰囲気を常にお楽しみいただくために最高のパーソナル・サービスと施設を提供することをお約束します。

リッツ・カールトンでお客様が経験されるもの、それは感覚を満たすここちよさ、満ち足りた幸福感そしてお客様が言葉にされない願望やニーズをも先読みしておこたえするサービスの心です。

組織にいる全員が、このように明確な価値観に基づき行動することは、スタッフの主体的な行動を後押ししてくれます。

ルールを定めることで、組織のメンバーとしての一体感・連帯感を醸成する

企業イメージやブランドは、経営者ではなく現場のスタッフひとりひとりの行動によって形づくられていきます。どんなに素敵な広告や宣伝をしても、現場のスタッフの価値観がバラバラでは会社としてまとまることはできません。

またスポーツチームでは、みんなが同じユニフォームを着ることで連帯感が高まります。クレドも同じく、メンバーが同じカードを携帯してその信条を大切にすることで、言わば心のユニフォームという役割を果たすことができます。

「わたしたちはこのような価値観を大切にする会社である」という規定をクレドによって定めることが、行動のルールとなり、チームワークを育む土台になるのです。

善悪の判断基準となり、企業のコンプライアンスを高める

企業は利益を追求するところですが、それが行き過ぎると不正を犯してでも利益をあげようとする風潮が生まれます。

記憶に新しいところでは、いわゆる「ソシャゲガチャ問題」や「キュレーションメディア問題」があります。

2012年頃、ソーシャルゲームにおいて、極めて確率が低いレアアイテムを景品にするガチャが流行。ゲームにはまった人が際限なく課金してしまい、自己破産をする人まで出ました。いわゆる「コンプガチャ」とも言われるこの手法は、運営側が射幸心を煽って課金させていることが問題視され、その後法律で禁止されました。

2016年頃にはキュレーションメデイアで広告収益をあげるために、医療資格のない人たちに記事を書かせて、不適切な内容が大量に掲載される問題が起きました。これも大きな社会問題となり、キュレーションメディアのモラルが問われる事態となりました。

Googleのモットーともされる「Don’t be evil(邪悪になるな)」に代表されるように、組織の一員としてのあるべき姿を示してくれるクレドは、このような過度な利益追求を抑止し、社会や人のために正しくあろうとするコンプライアンスを高めてくれるのです。

※2016年にGoogleからはこの行動規範が削除され、かわりに親会社「Alphabet」が「Do the right thing.(正しいことをしよう)」という新たな規範を定めています。

クレドのつくり方

クレドの効果や目的は理解しても、そこからクレドを作ることは簡単なことではありません。
クレドは「このように作りましょう」というルールはなく、その内容や書き方は会社によって実にさまざまです。

ここでは、わたしの会社が実際に行ったクレドづくりの流れをご紹介します。

1.クレド作成チームをつくる

まずは、クレドの作成を主導するプロジェクトチームをつくります。
人数は3〜4人くらいの方が、役割分担をして意見がまとまりやすく進めやすいでしょう。

わたしの会社では、最初のクレドづくりでは経営メンバーが、改定時にはスタッフが主導してクレドづくりを進めました。誰が定めても問題ありませんが、経営メンバーとスタッフがそれぞれの意見を出し合えると、より効果的だと思います。

2.クレドの目的や意味を共有し、事例を集める

次に、メンバー間でクレドをつくる意味や目的を共有しましょう。経営者でもスタッフでも同じ目線で考えることが大切です。

また、クレドには決まった型がないため、まずは他の企業がどのようなクレドを定めているのかを知ることがクレド作成の足がかりになります。各メンバーがよいと思った事例を集めて共有し、方向性を定めていきましょう。

3.自分の会社が大切にしていることを書き出す

例え今までクレドがなかったとしても、日々の行動でメンバーが大切にしている心がけがあるはずです。
普段の行動でどういうことを意識しているのか、何を大切にしているのかを書き出してみましょう。

「◯◯の皆さんはいつも笑顔ですよね」など、お客様から日々かけてもらえる言葉の中でも、あなたの会社の性格や文化が見えてくるはずです。

4.クレドの原案としてまとめる

目的を共有し、事例を集め、自社のことを考えていくと、自然と「こういったものがいいんじゃないか」と原案ができあがってくると思います。

この段階では絞り込まずに、とにかく自由にたくさんアイディアを出し合いましょう。ポイントは、どんな突拍子もない意見も否定しないこと。思わぬ形でアイディア同士がつながり、よい形にまとまるかもしれません。

その上で、同じような内容はグループにまとめ、それぞれのグループごとに文章という形で固めていきます。

5.他のメンバーに共有して意見を聞く

クレドの原案ができたら、他のメンバーにも意見を聞きましょう。いきなり「今日からこれがクレドです!」と言われて受け入れられる人は多くありません。

どのような形であれ、プロジェクトメンバー以外からの意見や感想を受け付けることで、会社全員が共有する行動規範として一体感を持つことができます。アンケートなどを取るのもいいかもしれませんね。

出た意見をもとに、改めてクレドをブラッシュアップしてまとめていきましょう。

6.クレドを決定し、全体に共有する

他のメンバーの意見も取り入れながら、いよいよクレドを決めていきます。

クレドのつくり方にルールはありませんが、項目はできるだけ少ない方が覚えやすいです。おすすめは3〜5個くらい。10個20個になると覚えること自体ができなくなります。

本当に大切にしたいことだけに絞り込みましょう。

クレドが正式に決まったら、いよいよ全員への共有です。

単に「今日からクレドに書かれたことを実践してください」というお知らせではなく、しっかりとクレドについて共有しましょう。

  • どういう目的でクレドをつくろうと思ったのか
  • どのような考えや経緯でこのクレドになったのか
  • これからどのように活用していくのか

また、伝えるだけでなく、そのクレドについてどう思うのかフィードバックをもらい、意見交換をすることで、よりクレドについての理解を深めることができます。

クレドをつくったあと浸透するために

実際につくったクレドカード。折りたたんで名刺大の大きさになる。

実はクレドを作るよりも、それを浸透させることの方が大変です。
どんなに素晴らしいクレドも実践できなければ意味がありません。

ここではクレドを浸透させるためのいくつかの方法をご紹介します。

クレドカードをつくって、いつも身に着ける

一番効果的なのがクレドカードをつくること。会社のロゴや理念も入っているとより素敵ですよね。

名刺入れに入るサイズだと携帯しやすく、いつでも見返すことができるので便利です。またモノとして存在することで、自然と認知も高まります。

クレドのカードはあくまで社内用ですので、デザイナーに依頼するのもいいですが、社内でデザインが得意な人に依頼してもいいでしょう。
webサイトがあれば、そちらにも掲載しておくと効果的です。

クレドミーティングを定期的に行う

クレドを広めるマネージャーを一人決めて、その人が呼びかけ人となってクレドを広める方法です。
具体的には、毎月クレドの項目の一つを目標に定めて、振り返りのミーティングを行います。

どのようなことを心がけたのかをメンバーで話し合い、クレドの一つひとつについて理解を深め実践を促します。
また最もクレドを実践した人を表彰するのも素敵ですね。

とにかく定期的に接する機会がないと、意外と存在そのものを忘れられてしまうもの。
朝礼などで声に出して音読をしているところもあるようです。

評価制度にクレドを組み込む

わたしの会社でも取り入れているのがこの評価制度の一つとしての組み込みです。

クレドはそれ自体が利益を生み出すものではありませんが、会社の理念を形作り、クライアントやチーム内での具体的な行動を促すもの。
言わば会社や組織へのコミットとして評価に値するものだと考えるからです。

ただし普段の行動は必ずしも上長や役員から見えることばかりではありません。
そこで360°評価を採用し、同僚や後輩からも全員が評価をつけることで公平な評価をつけられるようにしています。

評価対象とすることで、改めてクレドを組織に浸透することができます。

クレドを取り入れてから

いろいろとクレドについて書きましたが、わたしの会社は、まだクレドの運用についてうまくいっているとは言えない状態です。

クレドを改定したこともあり、わたし自身が「内容をすべて正確に覚えている?」と言われて自信を持ってYESと言えないような状態です。(これではクレドの浸透どころではないですね…)

それほど、クレドを意識して普段の行動に取り入れるのは難しいと感じています。

ただ、無駄だったか?なくしたいか?と聞かれると決してそうは思いません。
最初に述べたとおり、クレドの3つの効果は会社の経営にとても大きな役割を果たすものと考えているからです。

  • 経営者の判断を仰がなくても、スタッフ自身が主体的に行動できる拠り所になる
  • ルールを定めることで、組織のメンバーとしての一体感・連帯感を醸成する
  • 善悪の判断基準となり、企業のコンプライアンスを高める

わたしの会社はまだ小さいのですが、特に人数が増えてくるとクレドのある・なしは、組織としてのまとまりに大きな影響を与えるでしょう。

これからのフェーズで、改めてクレドについてしっかりと考えて、活用していきたいです。
クレドを検討されている方も、導入するだけではなくその運用に特に力を入れて、しっかり活用していくことをおすすめいたします。

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プロフィール
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とあるWebマーケティング・制作会社の役員をしています。このブログでは、私たちの会社のリモートワークやチームビルディングの取り組みを発信していきます。

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