ブラックだったWeb制作会社が、自由な働き方やチームワークづくりに取り組むようになった理由

はじめまして、Web制作会社で役員をしているcotauです。
実はわたしの会社は、入社当時はなかなかにブラックでした。9時出社で22時が実質定時、社内のコミュニケーションもチームワークもなく、入社数年で離職者が続出するような会社です。

そんな会社で意識が変わった最初のきっかけは、子どもが生まれたというとても個人的な理由でした。

これが「早朝出勤」「仕事を分担する」という働き方やチームワークを考えるきっかけになり、そこに新しい社員の入社などもあって、少しずつ今のさまざまな制度や文化を育んでいくことになります。

今日は、さまざまな働き方やチームワークの取り組みがどうして生まれたのか、cotauが入社してから今までの経緯を振り返り、このサイトを運営する目的を考えてみたいと思います。

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なかなかにブラック会社だった入社当時

cotauの会社は、入社当時は社長含め3名の小さなWeb制作会社でした。

小さくて和気あいあい…かと言うとそんなことはなく、社内はいつもシーンと静まり返っていて、聞こえてくるのは電話とキーボードの音くらい。仕事もハードで、朝9時に出勤して22時が実質定時という、今思うとなかなかにブラックな会社だったと思います。

人数が少ないため自分でなんでもやらざるをえず、業務の指導や納期の関係で協力することはあっても、分業的なチームワークもほとんど機能していませんでした。

来社したお客様に「◯◯さんの事務所は、いつも静かですよね」と言われるくらい会話がない職場だったのです。

ただ、はじめて入ったWeb制作業界で仕事をするのは楽しく、もともと内向的な性格もあってあまり会話がないことも気になりませんでした。上司の皆さんも、厳しい面はあっても「人として尊敬できる」方々だったのも仕事に打ち込めた理由だったかもしれません。

しかしそれは、必ずしも入社したすべての人に当てはまることではないですよね。

これまで、わたしが知っているだけでも6人以上のメンバーが、入社して数年以内に会社を去っていきました。せっかく仕事を教えて育てても、辞めてしまってまた人手が足りなくなる、という悪循環です。

チームワークが育たない半個人事業主の集まり

さて、そんな職場にいたcotauは、人が新しくはいっても「自分でやった方が早いし確実」「自分の方がよいものがつくれる」という意識が強くなってきます。

かんたんな仕事はふるけど「自分の仕事は自分でする」というスタンスです。これではチームワークが育まれるはずもありませんよね。

各自が持つノウハウやスキルは、共有されることもなく、半ば個人事業主の集まりみたいな状態になっていきます。

仕事が集中してしんどいときでも、とにかく残業して自分でやりきるしかないという状態でした。

それでも当時「不幸だった」という記憶はあまりないのですが、今振り返って書いてみると「そりゃ人によってはやめちゃうよね」と思います。

この時代に入社して、唯一今も会社に残ってくれているのはNくんひとりです。それほど”楽しくない会社”でした。

そんなブラック職場で意識が変わったきっかけ

スタッフが辞めていくのを見て、どうにかしないといけない!と決意を新たに…したわけでは残念ながらありません。変わったきっかけはとっても個人的な話でした。

子どもが生まれたのです。

22時退社では、ほとんど子どものお世話なんてできません。はじめは嫁さんに「仕事だから仕方ないじゃん。働く方も大変なんだよ。」とすべて育児を任せていました。

でも嫁さんは、もともとフリーランス。専業主婦が希望ではありません。ある日、ついに過労がたたって過呼吸になり、救急車で病院に運ばれる事態になりました。

幸い身体的には大したことはありませんでした。

でも、この件があって私は、切実に残業をやめなければならないと感じたのです。
だからはじめは「みんなで働き方を変えよう」ではなく「私が残業をやめよう」が目的でした。

残業をなくすために取り組んだこと

残業をやめようと思ったものの、業務量が減るわけではありません。
今まで22時までやっていた膨大な仕事をどうするのか。

わたしが実際に取り組んだことは次の2つです。

  • 早朝5時に出社して朝残業することで定時に帰る
  • 社内や外注先とチームワークをつくり、自分にしかできないコア業務に集中

早朝出勤で深夜残業はなくせるか?

最初に私が考えたのは、「赤ちゃんが寝ている朝早くに出社して、お世話が大変な夕方〜夜に早く帰る」でした。

これなら仕事量を減らさずに、少なくても夜のお世話はできるようになります。

始発で会社に行き、5時半から業務開始。

はじめは眠気が襲ってきたり、結局遅くまで残ったりと、慣れるのに時間がかかりました。しかし、時間が経つにつれて、この早朝出勤は、思った以上の効果をもたらしました。

  • 夜残業と違い、朝の冴えた時間に業務をするため効率的
  • 声をかけられたり、電話がかかってこないので集中できる
  • 「早朝仕事しているから」という大義名分で、気兼ねなく定時退社できる
  • 育児に参加できて、嫁さんから感謝の言葉をもらえる
  • 子どもに顔を覚えてもらえるようになった

こうしてなんとか残業はなくなったのですが、あくまで個人の話で、しかも仕事の時間が朝にずれただけ。

身体的には仕事+子どもの世話で睡眠時間の確保に苦労するようになり、午後には睡魔に襲われることも出てきます。

さらに嫁さんからは、今まで任せていた保育園の送り迎えも分担してほしいとお願いされていました。定時の18時に帰ってもお迎えはできません。

これは朝残業もなくさなくては…。

危機感を強める一方、残業しないメリットを周りに話すことで、「残業が当たり前」の会社の空気は少し崩れました。

働き方を変えることが、業務効率をあげるだけではなく、ワークライフバランスなど個人の幸福度をあげることにもようやく気づいたのです。

※早朝出勤についての詳しい記事はこちら

社内や外注先とチームワークをつくり、自分にしかできないコア業務に集中

早朝出勤をはじめてから半年、ついに私は朝の残業をなくすことを本格的に考え始めます。

まず、自分でやらなくてもいいこと、つまり事業のコアでない部分を外注や社内メンバーに振ることです。

会社ではWebサイトを作る仕事をしているのですが、この中でお客様とやり取りしたり、サイトの構成やコンセプトを決めるのは、仕事の成功を左右するディレクターのコア事業。

逆にデザインや、それをプログラムするコーディングは、しっかりとサイトのコンセプトが固まっていれば、社内のメンバーや外注さんにもお願いできます。

今まで私は「他のメンバーや外注さんに任せるより、自分でやった方が早いし、よいものができる」と思い込んでいました。

しかし、実際に他のメンバーや外注さんにお願いしてみると、むしろ自分では思いもしなかったアイディアやテクニックから、よりよいものができることに気づかされました。

はじめは、コミュニケーションや連携不足、指示出しがうまくいかないなど多少のトラブルはありましたが、少しずつ他のメンバーとの仕事もスムーズにいくように。

このとき、わたしは「それぞれの強みを活かすチームワークの大切さ」にはじめて気づいたのです。

※このときのことは下記の記事にまとめています。

空気を読まない中途入社のスタッフたち

ようやく働き方やチームワークについての意識が芽生えはじめたころ、事業拡大にともなってMさんSさんという二人の女性スタッフが入社します。

いずれも中途採用で前職はなかなかのブラック。深夜残業が当たり前、休日に研修や飲み会があるような体育会系の職場です。私たちは「前職でかなり残業をやっていたのだから、多少の残業はお願いできるだろう」という認識でいました。

しかし、彼女たちはとんでもなく空気の読めない力をもっていたのです。

T社長「この仕事今週中で頼めるかな」

Mさん「う〜ん、今やっているのが明後日期限のため難しいです。来週までもらえませんか?」

T社長「(!?)せ、せやな。そっちが優先やしな。一度お客様と調整してみるわ」

なんと社長の依頼すら断り、定時頃には帰ってしまいます。残業をすればできる量でも、残業をしない前提でスケジュールを組み立てるのです。

社長や私は、当初彼女たちの融通の効かなさに舌を巻きました。

しかし一方で、やるといった期限はしっかり守り、たいてい期限の前には上司に確認を出し、仕事を終わらせます。

このためチェックや修正をする時間ができ、仕事の品質をしっかり確保していました。

それまでは、お客様第一。お客様の希望のスケジュールを前提で、多少無理してもやっていたので、どうしても品質に支障がでることがありました。また特に女性スタッフは、体調を崩す原因にもなってました。

無理な残業は仕事の効率を下げてミスを誘発し、体調を崩す原因になります。

彼女たちは、お客様の言うことが絶対、残業は当たり前という空気を見事にぶち壊したのです。

無理に残業をお願いすることはできません。

社長をはじめ私たちは、「定時に帰る」という前提で徐々にスケジュールを立て、お客様と交渉するように変わっていきました。

それは結果的に、お客様にとってもよいことだったのです。

ようやく生まれたチームワークの風土

私や中途スタッフなど、定時頃に帰る人間が増えてきたことで、もとからいた社員たちも少しずつ認識が変わってきました。

「残業をしないといけない」から「定時に帰ってもよい、いや帰る方が評価される」という風潮が生まれてきたのです。

また、それまで社内ではあまりコミュニケーションがなかったのですが、その頃から少しずつ社内の雰囲気が明るくなりました。

単純に人数が増えたこともありますが、プライベートな時間をしっかり確保できることで、精神的に余裕がでてきたのかもしれません。

毎日の朝礼の時間には、「おやすみにUSJで遊んできました☆」「この間見た映画がおもしろかった!」という話題が飛び交います。

さらに中途で入ったMさんが、「ウチの会社はとても働きやすくていい会社だよ」と勧めたことをきっかけに、新たにスタッフが入社。

元の職場が同じで友人という関係の二人が入り、会社全体でもお互いに仕事をフォローし合う関係ができてきました。

参考)よかったこと終礼

T社長とNくんの変化

追い風になったのは、T社長にも子どもができたこと。またベテランスタッフNくんの結婚です。

T社長とNくんは、どちらも社内で最も深夜残業をいとわず、お客様のためならバリバリ働く責任感の強いタイプ。

そんな二人も、子育てや結婚を機に、ライフワークバランスを考えなければならなくなりました。

それまで個人個人でやることが多かった仕事。

今では、私もスタッフに仕事を任せたり、逆に大変な時にはフォローしたりしています。

お互いの得意分野を知り、仕事を任せ合うことで、会社全体でようやくチームワークをとれるようになったのです。

こうして、残業時間は昔では考えられないほど少なくなり、繁忙期をのぞいて、ほとんど定時に帰れるようになっていきました。

自由な働き方とチームワークが会社を変える

2021年、入社してからちょうど10年を迎えました。あの頃赤ちゃんだった子どもも、今年で小学校に入学する年になっています。

会社ではその後も、リモートワークの導入をはじめ、様々な働き方やチームワークづくりの取り組みを進めています。嬉しいことに、ここ3年以上、退職するスタッフも出ておらず、新たなメンバーも増やすことができました。

会社を変えるというのは、すぐにできるものではないかもしれません。
ブラックだったわたしの会社が変われたのも、子どもが生まれたり、新しいスタッフが入ったりとさまざまなきっかけがありました。

でも変わって気づいたことは、自由な働き方とチームワークがある会社はとっても楽しいということです。

自分や家族はもちろん、一緒に働くみんなが楽しいと思ってもらえることが、わたしにとっては一番しあわせなことだと感じています。

深夜残業が当たり前の会社で、残業をなくすことは容易なことではありません。
私の会社で実現できたことは、たまたまタイミングや運が良かったこともあるかもしれません。

それでも自分のしあわせを考えて、「なんとかなくそう」と思わなければ、実現できませんでした。

それができたのは、仕事を効率的に行うとか、売上を上げるとかだけでなく、自分の人生として、何を一番大切にするかを考えられたからかもしれません。

私にとって、妻と子どもと一緒にいる時間はかけがえのないものですし、家族やスタッフみんなが笑顔でいられることを一番大切にしたいと考えています。
そのことが、結果的に取引先や社会全体にとっても、しあわせに繋がることだと思っています。

このサイト、carutaが、自由な働き方とチームワークを育むきっかけとなり、あなたとあなたの会社のメンバーのしあわせに、少しでも役に立てれば嬉しいです。

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プロフィール

とあるWebマーケティング・制作会社の役員をしています。このブログでは、私たちの会社のリモートワークやチームビルディングの取り組みを発信していきます。

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