- 対象
- 全スタッフ
- 難しさ
- 中
- 実施時間
- 数時間〜1日
- コスト
- なし
- 主な内容
- 半期に1回など、定期的に会社や役員に対する匿名アンケートをとる
- アンケートをもとにスタッフのモチベーションやエンゲージメントなど、客観的な数値をして把握する
- 働きやすい会社にできるように、見直しや改善の取り組みにつなげる
- 効果
- 匿名アンケートで、スタッフが会社や役員に対してどういうことに満足したり不満をもっているのかわかった
- 定期的に行うことで、取り組んだことに効果があったのかなどを見返せるようになった
- 働きがいのある楽しい会社を実現するための指標にできた
会社や役員へのホンネを聞き、社員のエンゲージメントをアップする
わたしの会社では、2020年4月に「役員フィードバックアンケート」という仕組みをつくりました。
社員全員から匿名で率直なフィードバックをもらえることで、会社・役員をみんながどう思っているのか、いいところ・不満なことを知るよい機会になったと感じています。
正直なところ、役員の立場としてショックを受けた回答もありました。
でも、まずは率直な評価と受け止めて、改善につなげていくことができたと感じています。
特に社員の働き方、エンゲージメントを高めていくのに有効なツールです。
今日は、役員フィードバックアンケートの内容や方法と、2回やってみた結果をシェアしますね。
役員フィードバックアンケートの内容
役員フィードバックアンケートの概要
- 設問数 :21問(5段階評価19、記述式2) + 役員数×2(記述式)
- 質問方法:Googleスプレッドシート
- 集計結果:公表 + 役員によるフィードバック発表
- 設問期間:半年に1回
- その他 :回答は無記名(匿名)
設問内容
会社での働きがいを問う5段階評価19問
1. 会社のめざす方向とその実現方法が明確である
2.経営・管理層は、言うこととやることが一致している
3.仕事や職場環境に関する意思決定に、スタッフを参画させている
4.この会社の管理職は、えこひいきしないように心がけている
5.私は、この会社において専門性を高めるための研修や能力開発の機会が与えられていると思う
6.経営・管理者層は、仕事を進める上で失敗はつきものであると理解している
7.この会社の労働環境は、安全で衛生的である
8.この会社では、誰にでも特別に認められる機会がある
9.この会社の人は、裏工作や他人を誹謗中傷しないように心がけている
10.この会社では、従業員は性別に関係なく正当に扱われている
11.私は、この会社に貢献していると思う
12.私たちが会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う
13.私は、この会社で働いていることを、胸を張って人に言える
14.この会社の人たちは、仕事に行くことを楽しみにしている
15.この会社での仕事は、働きがいがある
16.この会社では、スタッフは責任ある仕事を任されている
17.この会社の人たちは、お互いに思いやりをもっている
18.この会社は、入社した人を歓迎する雰囲気がある
19.この会社では、仕事や部門の変更が許容され、自由に挑戦できる雰囲気がある
これらの内容は、Great Place to Workの「働きがいのある会社」ランキングで使われている設問を元に設定させていただきました。
ちなみに社員の幸福度を測るという意味では、前野 隆司さんの『幸せな職場の経営学』で紹介されている設問もとても参考になりました。そちらはより社員個人の幸福度に焦点のあてた内容になっていますので、興味のある方はぜひご覧ください。
会社への率直な意見を記入する記述式2問
1.会社全体について、特に好きだと思えること、気に入っていることを教えてください。
2.会社全体について、改善してもらいたい点や、ストレスを感じることを教えてください。
この2つはオリジナルの設問です。会社についてのダイレクトの感想をもらえる内容になっています。Great Place to Workにも記述式の2問の設問がありますが、「働きがい」に焦点を当てた内容になっていますので、内容を変更しました。
Great Place to Workの記述式設問はこちらにあります。
役員に対する意見を問う記述式2問
最後は、役員それぞれに対して回答してもらう記述式2問です。
1.対象者の行動で素晴らしい点を自由にお書きください
2.対象者の行動で改善してほしい点を自由にお書きください
この設問は、「リーダーシップ・アクションプログラム」というわたしの会社の代表が受講した研修で使われていました。
受講者と関わる上司・部下・取引先などの人に匿名のアンケートを取って「自分が周りからどう思われているか」を理解するという内容です。(リアルワン株式会社による「360度サーベイ」)
この研修ではその他にもかなりの設問があったのですが、中でもこの2問が「役員が社員からどう評価されているか」を理解するのによいと感じて取り入れました。
実際に役員フィードバックアンケートを実施してわかったこと
実際に2020年3月末に実施した結果と、2020年9月末に実施した結果を比較してみましょう。
※「1=いいえ」「5=はい」の5段階評価です
2020年3月末実施
こうしてみると、特に以下の3点についての評価が低いことがわかりました。
・会社の目指す方向性とその実現方法が明確である
・私たちが会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う
・この会社の人たちは、仕事に行くことを楽しみにしている
また自由記入欄では、業務以外での研修や目標管理への負担、役員の決定プロセスに関する不満などを持っている人がいることがわかりました。
書いてみると大したことではないようにも感じますが、正直、自分でも意外なほどこの結果にはショックを受けたことを記憶しています。
特に、研修や目標管理などの評価制度は当時もっとも力を入れて取り組んでいました。会社をよくしようと思ってやってきたことが、かえって社員の幸福度やエンゲージメントを下げているのだとしたら、「いったいなんのためにやっているのか」と考えざるを得ません。
でも、そう考えることが、また改善への一歩へ進むきっかけになったと感じています。
私はこの結果を受けて、社員に対する接し方やプロジェクトの進め方を変えていくことにしたのです。
2020年9月末実施
前回から半年後に行ったアンケートでは、なんとすべての項目で平均点があがりました。
「1=いいえ」を選んだ人がいなくなり、特に下記の項目では、平均値で1以上も上昇しています。
項目 | 2020年3月平均 | 2020年9月平均 | 上昇値 |
私は、この会社において専門性を高めるための研修や能力開発の機会が与えられていると思う | 3.125 | 4.375 | 1.25 |
この会社の労働環境は、安全で衛生的である | 3.625 | 4.875 | 1.25 |
この会社の人は、裏工作や他人を誹謗中傷しないように心がけている | 3.75 | 4.75 | 1 |
私は、この会社に貢献していると思う | 2.5 | 3.75 | 1.25 |
私たちが会社全体で成し遂げている仕事を誇りに思う | 2.875 | 3.875 | 1 |
この会社では、仕事や部門の変更が許容され、自由に挑戦できる雰囲気がある | 3.25 | 4.25 | 1 |
原因はいろいろ考えられますが、特にこの半年で新たに行ったいくつかの取り組みによるところが大きいのではないかと考えています。
社員のエンゲージメント・幸福度上昇に効果があったと思われる取り組み
ひとつは社員自らがプロジェクトを立ち上げる「新規事業創出プロジェクト」。役員が介入せずに、スタッフ自らが企画立案した事業を、有志のチームで進めていきました。
もうひとつは、「日報全レスチャレンジ」。スタッフ前任に日報を書いてもらい、毎日その日報の「よいところ」「できていること」に注目してコメントを返していきました。
また、プロジェクトの進め方そのものを変えたことも、主体的な取り組み、自己効力感に影響を与えたように思いました。
今後の課題
一方で、責任や権限の分散は、会社の方向性が分からないという不安を持たれる結果になりました。
今後はこういったリーダーシップの発揮の仕方を考えていく必要があると考えています。
しかし、そういったスタッフの考えや不安を汲み取り、会社をよりよい方向に進めていくヒントを得ることができるのが「役員フィードバックアンケート」の効果だと感じています。
※ちなみに、役員各個人への意見も「みんなからどう思われているのか」客観的に知る機会になり、自らを省みるよいきっけになりました。
役員フィードバックアンケートのまとめ
最後に、このフィードバックアンケートの実施にあたり重要だと思ったポイントをまとめますね。
・半年などアンケートを取る期間を決める
→繰り返し実施することが、振り返りの指標につながりました
・設問は基本的には変えない
→どのような変化があったのかを比較しやすいです
・匿名であること
→実名では聞けない、率直な意見をいただけます
みんなにとって会社や役員はどう思われているのか?
もっと働きやすい会社にするためにはどうすればいいのか?
ぜひ、そういった疑問を解決するきっかけとして、役員フィードバックアンケートをお試しいただけると嬉しいです。