Web制作をしているわたしの会社の課題のひとつに、利益率があります。
つまり見積りに対してどれだけ工数がかかり、結果どのくらいの利益をあげることができたのか、という指標です。
見積り金額に対して、工数が少なければ少ないほど、利益率は高くなります。
だから作業を効率化し、マニュアル化し、情報共有をして属人化を回避する。
これは企業としてとても正しいやり方だと思います。
思うのですが、果たしてこれでよいのか?と思うことがあるのです。
効率化と利益率は、悪い言い方をすれば「手を抜けば手を抜くほど利益があがる」ということだからです。
建物が耐震基準を満たしていなかったとか、安全基準を満たしていない製品を出荷したとか、そういう問題を聞くのは、企業が利益を最優先にするからです。
Web制作業界に関しても、実は手を抜こうと思えばいくらでも手を抜くことができます。
見た目でわかるデザインはもちろん、プロでなければわからない裏側のプログラムは、雑にやっているところはそれこそとんでもないことになっていることもあります。
- 見出しやリストなどのタグ使いがめちゃくちゃ
- altなどの画像代替テキストが設定されていない
- 画像サイズが一致せずとんでもなく重い
- スマートフォンやブラウザの種類によって画面が崩れる
こういうサイトは、読み込みが重かったり、検索順位が上がらなかったり、セキュリティが低かったり、一見きれいでも結果につながりません。
本来やるべき工程を飛ばし、クオリティを下げて、とりあえず見た目さえ整えれば、それはコストはかなり落とせるでしょう。
様々に発生する問題も、口八丁で煙に巻くことは難しいことではありません。
逆に、見えないところも手をかけて、裏側まで丁寧に作り上げられているサイトもあります。(もちろん、多くのサイトはそのように作られています)
クライアントやユーザーからはわからないそんなこだわりぬいたサイトは、本当に美しくて惚れ惚れします。
でもその分、工数はかかり費用は高くなります。
結果的に、クオリティにこだわればこだわるほど、妥協せずに仕事をやり抜くほど、利益率はさがっていく。
時間をかければいいものができる、とは限りませんが、いいものを作るには時間がかかるのもまた事実です。
ここにわたしたちのジレンマがあります。
ひとつの解決策は、費用をあげることです。
でも、価格競争という面から考えると、どうしても安くやる会社の方が受注率があがる。
営業やディレクターがしっかり説明すべき問題ではありますが、限られた時間で構造や作りのひとつひとつを説明することは、あまり現実的ではありません。
だから、この費用とクオリティのバランスはとっても難しい。
結局、作り手である一人ひとりが熟練度をあげて、スピードとクオリティを両立させていくことが最も重要になってきます。
また、何をどこまで作り込むのか、制作基準となる企業文化を持つことも大事でしょう。
人によって手を抜くけど早い人と、こだわってクオリティの高いものを作る人、どちらを評価するのかで企業の文化はつくられていきます。
だから、Web制作におけるモノづくりは、メンバーの成長とチームづくりが、クリエイティブなアウトプットの質に直結しているのです。
ここに妥協してしまうと、良いものが作れず、最終的に利益は下がってしまう。
よいものを作るためには、何よりも人を育て、文化をつくること。
わたしはそれを一番大切にしたいと思っています。