なんだか禅問答みたいなタイトルだけど、”売らない”というスタンスの営業が、実は一番売るためには効果的じゃないかと思うのです。
例えば、わたしと妻さんがとても信頼している保険の営業さん(50歳前後の男性)
この方、全く売らない。正確には「”この商品”を売ろう」という意志を感じないんです。
こちらの話を「はい。はい。」とゆっくり聞いてくれる。とにかく物腰柔らかで落ち着いている。
わからないことは「それはわからないですよね」「お調べしますね」と、正直に言って強引に話を進めようとしない。
もちろん、「こういった商品が合っているのではないでしょうか?」とおすすめはしてくれますし、説明もしっかりしてくれます。
でも、こちらの意志を最大限尊重して、「絶対これがオススメですよ」「今だけお得です」なんて言葉は使いません。
ちなみに、この方とお会いしたきっかけは「学資保険」を検討していた時。
この時、他の営業さんにも何人かお話をお伺いしました。
- 「それでは契約ですが…」と早々に契約に持っていこうとする営業さん
- 「それならこれがオススメです!」と熱い営業さん
スタンスが全然違いますよね。
契約を決めた営業さんは、こちらの話をゆっくり聞いてくれて、目的と意図を汲み取って「それなら、学資保険よりこちらの方がよいのではないでしょうか?」と別のものを勧めてくれました。
実際に契約して、学資保険よりもはるかによかったと思っています。
わたしが営業の立場で思うこと
さて、わたしの会社はWeb制作をしているので、中小企業の代表者様とお話する機会がたくさんあります。
相手によっては、自信満々なスタンスで強く押す方が契約につながる場合もありますが、それでも共通しているのは話を聞くことと、相手の方にあったご提案をすることです。
例えばプレゼンというと、「考え抜かれた完璧なプラン」をご提案するというイメージがありますが、わたしが成功したと感じるプレゼンは穴だらけの場合が多いです。
四角い枠だけあって肝心な数値や情報が入ってなかったり、事前に聞いていた相手の希望に対して「これでいくのは正直自信がありません」という話をします。
肝心な情報が入っていないのは、事前の提供情報では不十分だったケース。だからプレゼンの場で直接お伺いします。
「この数値が実際のところわからないのですが、どのくらいでしょう?」
「具体的にこの顧客というのは何歳くらいでどういう業種の人が多いですか?」
話を聞いていく中で、「それなら…」と組み立てていく。すると相手方も「こちらをよく理解して考えてくれている」という印象を持ってもらえるようです。
また相手の希望に対して「自信がありません」というのも、正直な印象を持ってもらえるケースが多いです。
実際、多くのクライアントはWebのプロではないので「こういう感じでリニューアルをしたい」と言っていても、目的や背景をお伺いすると、「そうしない方がよい」と感じるケースはしばしばあります。
「こうしたい」という言葉の裏にある目的を聞き出して、それを達成するための最適な方法をご提案することが、結局は相手の方にも自分たちにとってもベストな方法だと思うのです。
営業マンに求められるもの
こうしてみると保険屋さんとわたしがうまくいったケースには共通点が多いなと思います。
- まずは話を(ゆっくり)聞いてくれる
- わからない、自信がないことは、素直に伝える
- 希望の裏にある意図を汲み取って、想像以上の解決策を提案してくれる
業種や商品ってたくさんあるので、特に早さを求められるような場合や安価な商品は、当てはまらないかもしれません。
ただ、ある程度費用が高かったり、長いお付き合いになるようなものに関しては、「(強引に)売らない」というスタンスはとても大切ではないかと思います。
本当に希望されている商品が、お客様にあっているのか?
そもそもお客様は何を求められていのか?
「何かを売る」のではなく、「相手がなにを求めているのかを聞きにいく」というスタンスが、一番営業に求められているのではないかと思うのです。